最終更新:2019/04/02
私が実際に習ったことがある武道、武術の中から、これからそれらを修めることを目指す方向けに簡単なおすすめランキングを作ってみました。
特定の流派を推さぬように書いてはいますが、主観で書いている点はご承知おきください。
〇尊敬できる師匠、兄弟弟子、武道仲間を求めている方におすすめ
一位 日本古武術
二位 少林寺拳法
三位 少林拳、合気道
理由:多士済済で色々な仕事に就いている方がいるので、価値観も多様で、良い仲間に出会えると思います。古武道というニッチなジャンルを選択する時点で、やや変わり者が集まる傾向もありますが(失礼)、日本の古武道は良くも悪くもほとんどが型稽古です。血の気の多い方よりも、武道を日本の伝統文化と捉えて取り組む方が多いのが特徴です。また、師範にも人格が素晴らしい方が多い印象です。合うか合わないかの判断には体験・見学を。
猛々しいパワフルな人よりも、包容力と慈愛を仲間に求めている方は、技術だけでなく心の育成も意識している指導者を探すとよいでしょう。
〇一体一の喧嘩が強くなりたい方におすすめ
一位 クラヴマガ
二位 ボクシング
理由:喧嘩は短期勝負です。そして高確率で顔面を狙います。それをかわして一撃を入れられる武術が優位です。よほどの油断をしない限り、ボクサーにパンチは当たりませんし、フック一閃で勝負は決します。ボクサーの喧嘩はほぼ一合で決します。裸拳での激しい打ち合いはほぼ無いと思って間違いないでしょう。ただし、それをかいくぐる相手が居た場合は掴み技のある柔道系の勝利は揺るぎないことでしょう。相手を地面に叩きつけるタイプの投げ技を決めた時点で勝負は決まります。ちなみに関節技は相手を行動不能にはできますが、やりすぎるとあっさり傷害罪になります。
空手はなぜないのか、という疑問にお答えします。極真空手の使い手と極真ルールで戦ったら、異種の方はまず勝てないことでしょう。裸拳と、体、足腰の頑丈さが尋常ではありません。それでも、私が書かなかったのは、顔面への手技による加撃が禁止されてしまっているからです。草創期は掌底による顔面攻撃ありなど、ほぼなんでもありだったようですが、現在は異なります。ただ極真空手家に先手で顔面攻撃できるかどうかは簡単な話ではないので、極真空手=実戦向きではないということではありません。ご留意を。
また、強いということは防御にも長けるという意味もこめています。加撃することだけでなく、自分の急所を守ることも考えてみてください。
クラヴマガは、格闘技とは異質な軍隊格闘術です。相手の行動意思を止めるための技ばかりで、SPなど相手を制圧する必要がある職業の方にも採用される格闘術です。システマやカリの方が有名かもしれません。技術としては、打撃は相手の急所を正確に、関節は攻め手の場合も反撃の場合も扱えるような汎用性の高い技が多いです。
〇多人数格闘に強くなりたい方におすすめ
一位 少林拳
二位 クラヴマガ
三位 空手道、柔道
理由:戦闘という面における汎用性の高さから選びました。急所を狙う攻撃とその多様性は古武術の方が長けていましたし、こういう局面を想定しているような技術が多かったです。一撃必殺と言えば聞こえはよいですが、相手がしばらく動けなくなる様な技(目くらましなど)が多く、窮地から離脱できる可能性を考えてのランキングです。
中国拳法という総称で語られることが多いので、ここで一言。少林拳は剛拳(外家拳)、太極拳は柔拳(内家拳)と呼ばれるジャンル分けになります。日本の空手も外家拳のジャンルに入るでしょうが、合気道が内家拳に入るかと言われるとやや違う気がします。話が脱線しましたが、中国拳法は日本武道と異なり、非常に実践的かつ効果的に相手にダメージを与えるように構成されています。日本武道が戦後、GHQの眼から逃れるために精神性を貴ぶことを選んだことで、非常に危険な技は封印されるに至りました。それ自体は良いことと思いますが、双方を学んだものからすると、日本武道はやや精神面に偏り過ぎな気がします。皇宮護衛官など特殊な任務、かつ、門外不出を守れる方だけでも、実践的(実戦的)武術を伝承していることを切に願います。
クラヴマガは軍隊格闘術とはさきほど述べましたが、回避や防御と同時に攻撃を行うことが特徴的です。ボクサーのカウンターを全方位、全体位でできるように訓練されます。極めるのに相当の修練が必要というのが私の印象ですが、極めれば怖いものなしでしょう。
〇護身術としておすすめ
一位 合気道・クラヴマガ
二位 柔道
三位 少林寺拳法
理由:相手を痛めつけずに自分の身を護ることができる武術です。中途半端な攻撃は相手を逆上させてしまうので、捕縛や抜き技に長けた武術がおすすめです。特に、力に自信の無い方がふとしたピンチから抜け出す時におすすめです。合気道の強さに疑問を持っている日本人の方は非常に多い事と思いますが、少林寺拳法の柔法と合気道の達人と手合せすると「触りたくない」と思わざるを得ません。力をどんなに入れようとそれをいなす法を心得た彼らが修めているものこそ、真の武道と言っても過言ではないことでしょう。
合気道家・柳龍拳氏 VS 総合格闘家・岩倉豪氏の試合をみて、合気道に失望した方は少なからずいることと思います。喧嘩のような場面で、壮年の打撃系と合気道家が戦ったとしたら、後者の勝率は悪いかもしれません。実際、打撃の引きが素早い相手に対しては掴み技の合気道は苦戦することでしょう。かつての名人達はいざ知らず、普通の合気道家がこうした格闘技戦の場で勝利する場面は観ることは、なかなか難しいのかもしれません。
ただ、細く長く一生稽古をつづけること、お歳を召してからも技術が向上するのは東洋武術の特徴ですので、その点に着目して頂ければ、こうした「護身術」と呼ばれるジャンルも捨てたものではないと考えております。
クラヴマガは戦火の絶えないイスラエルで磨かれた武術なだけあって、命を守るという意味ではずば抜けています。目つぶし金的なんでもありで、危地を脱するという考え方なので、毛色が他の武術と異なることは肝に銘じてください。日本においては、合気道の方が適した場面が多いので、同列一位としました。
〇身体(ガタイ)を大きくしたい、厚みを増したい方におすすめ
一位 柔道
二位 総合格闘技
三位 空手道
理由:科学的な根拠はなく、経験則です。普段から衝撃に鍛えられ、力を持続する時間が長いためか、関節技や投げ技がある武術が上位にあります。貧相な体を強くしたい、見た目ゴツくなりたいという考えの方は一度、これらの道場を訪ねてみてはいかがでしょうか。柔道はその破壊力から、受け身をしっかり練習していないと体を痛めることがあります。総合格闘技や柔術系でも、足関節の練習には十分気を付けてください。
〇シェイプアップ、運動不足の方におすすめ
一位 ボクシング
二位 キックボクシング
三位 跆拳道 (テコンドー)
理由:一位、二位は痩せない可能性ゼロ、滝のように汗がかけます。ライ○ップに行くよりもはるかに楽しく、有意義に痩せることができます。ジムでサンドバックを叩くだけでも、Tシャツが2枚は汗に染まります。 三位はアクロバティックな動きが柔軟性、運動能力向上に良い武術です。股関節を大きく使う運動は日常生活ではなかなか行えないので、非常に爽快感を得ることができます。
〇武術初心者の女性におすすめ
一位 薙刀道
二位 合気道
三位 少林寺拳法、日本古武術
理由:女性競技者の人数が多いことが希望で、痛いことが苦手という方にお勧めする武術です。薙刀道も防具稽古すると痛いので、そこはご注意を。薙刀は学校の部活でない限り、ご高齢の女性の割合が多いです。礼節に細かく、教え方も丁寧でした。合気道は、筋肉を激しく使う武術でないので、女性も習いやすく、競技人口も多かったです。少林寺拳法・伝統空手は、勝利を目的としたものでないため、武術的動きを一からゆっくり学びたい方におすすめです。また、新撰組の影響からか幕末に活躍した剣士が多い流派には、女性剣士も多いです。体験が億劫であれば、古武道は演武会も多いので、沢山の流派を観覧しながら門下生の雰囲気を感じ取っても良いかもしれません。
〇いい歳した社会人だけど習い事くらいで武道を始めたいなという方におすすめ
一位 合気道、少林寺拳法
二位 日本古武術
三位 ボクシング
理由:社会人で一番気にするのは怪我をすることかと思います。合気道や少林寺拳法は投げが含まれているので、全く怪我をしないわけではないのですが、スーツを着ていても使えるような掴み技が多いので、有用性を買って一位としました。実際に、血しぶきが舞う肉弾戦は、普通の生活をしている方はそうそうありません。ちょっといざこざに遭って腕や胸倉をつかまれても、それをいなすことができれば十分ではないか、というのが私の考えです。また、ボクシングを修めていると、上半身を多少殴られても効きませんし、見違えるように変わる自分の体に高揚しますので、武術をやっている実感を楽しむ意味での三位です。また、スパーリングをしなければ、楽しいスポーツとして習う事が出来ます。
蛇足ですが、道場稽古はどうしても門下生が揃ってから始めるために時間的制約があります。仕事が忙しくて、決まった時間に帰れない方はボクシングや総合格闘技などのジムに通うことをおすすめします。シャワーも当たり前についているので、仕事帰りのリフレッシュにもなることでしょう。
〇和の素養として武術に興味がある方におすすめ
一位 日本古武術
二位 薙刀道
三位 合気道
理由:体幹を意識した立ち居振る舞い、下半身の使い方、礼儀作法など、武器術を主体とする日本古武術に追随するものはないでしょう。厳密に言うと、薙刀も合気も、九大武道に属していますが、日本古武道の流れを大いに含んでいます。というか、薙刀有名流派は日本古武道協会にも属しています。
武器は手で扱うと思われがちですが、体幹や下半身で扱うので、ほぼ100%姿勢を意識するようになります。さらに、体の接触が嫌だという方にも武器術でしたら、ぶつかり合いは多くありません。(宗家の方々からすれば冗談ではないかもしれませんが)和の動きを学びたいというだけの方にも、大きな成果をもたらしてくれることでしょう。また、本当に巧い方々は、舞っているかのような流麗な動きをされるので、その動きを目指すだけでも、意義あることでしょう。
〇お子様の教育上おすすめ
一位 日本古武術
二位 柔道
三位 少林寺拳法・空手道・薙刀道
理由:礼節を大切にしつつ、幅広い世代と交流ができる武術を選びました。日本の古武道は非常に多岐にわたるので一概には言えませんが、日本古武道協会に参加しているものは日本武道館の演武会など、他流派との交流がありますし、神道を通じて歴史にも明るくなります。但し、未成年世代は少ないです。二位以下は組織が大きく、子供教育に力を入れている武道です。老婆心ですが、子供が武道を習うことには
①武道の楽しさを教えてくれること②武力に偏らずに礼節を第一に教え込むことが本人のためにもご両親のためにも大切なところです。
①が欠けると、長続きしませんし、②が欠けると、ただの乱暴者になります。子供が沢山いる=良い道場ではなく、子供がやっていて楽しめるかどうかが小学生くらいの子供にとって大切なことだと思います。また、それを理解して、厳しさだけでなく、思いやりをもって指導してくれる師範がいれば、幸せなことです。理想ですが。。。
(追記)剣道は体育としても精神修養としても非常に良いらしいです。知人の子も凛とした佇まいで、見惚れるくらいです。しかし、私が未経験なので除外いたしました。「なんで剣道がないんじゃい」という方、ご理解を。
○おまけ 東洋武術と西洋武術の違いについて
合気道や少林寺拳法を修めている人と、総合格闘技を練習している人では体格が違います。
それは力なきものが力あるものを制するための技術を修める武道か、相手を戦闘不能状態に追い込むため力をつける格闘技かの違いであり、そのために使う筋肉が違うからです。
剣道の中に、「一眼二足三胆四力(いちがんにそくさんたんしりき)」という言葉があります。
一眼とは相手の力量・思考を見抜く洞察力
二足とは自分を支え、技を繰り出す根幹となり、間合いをつめる足腰
三胆とは強きを挫き弱きを助ける、困難に、強者に立ち向かう胆力
四力とは筋肉を用いて繰り出す力
一に近いほど重要であるが身につきにくい。
体格に劣っていてもそれより重要なものが存在します。
また、試合をする際のセコンドのアドバイスにも大きな違いがあります。
東洋系に多いのは「自分の普段の力を出し切ってきなさい」
西洋系に多いのは「相手を殺してこい」
後者が野蛮であると言いたいのではなく、武道と格闘技が掲げる思想の違いが如実に表れているということです。
筋骨隆々で早く結果を出すには西洋武術、心身壮健に長く続けるなら東洋武術、というのが私の印象です。
○おまけのおまけ 武道の思想
武道を修めると内面から磨かれる、というのが私見です。
静を基本とした構え、その体勢を維持する筋肉(今風に言うとインナーマッスル)、正座や座り方といった日本伝統の動きは武道の基本です。
茶道や華道を修めた女性の動きや言動に落ち着きが見られるのをご存知の方も多いかと。
私は色々な武術に触れる機会がありましたが、これは武道と呼ばれる部類に顕著にみられるものでした。
武道の道とはこういった人生を歩むための道、人を育てるための道なのではないでしょうか。
また、「武」という文字は「矛を止める」と言う意味を持っています(本来は歩兵が武具を持って行進する意)。
暴威を諌め止めるための力が武力です。
武道の「道」が相手を倒すためではなく、人を守り導くための道だとしたら、宗教国家でない日本には一つの道標かもしれません。
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