クラヴマガの歴史🇮🇱
イスラエル発祥の軍人格闘クラヴマガ。創設者はイミ・リヒテンフェルド氏(故人)で、様々な格闘技のエッセンスを抽出し、より実践的な武術としてクラヴマガを生み出しました。
イスラエルは建国(1948年)前からアラブ諸国との争いが絶えず、現在でもその火種は沈静化したとは言えません。そんな中で、実戦護身術として、そして、近接格闘技として、クラヴマガは練り込まれていきました。クラヴ=戦闘、マガ=近接という意味で、弟子が付けた名前をイミ氏が気に入って使用したそうな。イミ氏は商売っ気があまりなかったとのことで、弟子の間でクラヴマガの優れた技術や商標を巡って、様々な対立や分裂が起こりました。極東の日本でも商標問題が発生しました(後述)。それだけ、魅力ある軍人格闘術ということなのかもしれません。
その有用性に目を付けたアメリカを中心に、インストラクターと呼ばれる講師を各国に派遣して普及活動を行っており、日本の武道のような帯の色分けによる階級制度を採用しています。イミ氏の高弟であったヤロン氏、エヤル氏を筆頭に各団体派生団体が設立され、各々が独自のカラーでクラヴマガを指導しています。独自のカラーというのは、クラヴマガが日本武道と異なり、「型」というものが絶対ではないため、解釈によって色々な技に変容するためです(後述)。
日本ではアメリカンクラヴマガを修めた松元國士氏(故人)が創設したクラヴマガ・ジャパンと、イミ氏・ヤロン氏に師事したBoaz Hagay氏が設立したImi Krav Maga(Bukan School of KravMaga所属)など。
やや暴力的なシーンも含む、イミクラヴマガ発祥の映像です。
1:17あたりから、なぜユダヤ人が身を守るためにイミクラヴマガを生み出したかが良く分かります。
クラヴマガの理念📚
イミ氏は柔道と柔術、レスリングの技術が優れていため、近接武術として非常に有効な技が多いです。クラヴマガのプロモーション映像などを見ると、筋骨隆々とした外国人男性が相手をがんじがらめにしたりぼっこぼこにしている映像が多いですが、イミ氏が目指したクラヴマガは護身術としての技術であり、別名ハガナアツミットという言葉もあるくらいです。護身術という要素で相手を柔の技で行動不能にするあたり、少林寺拳法と理念が似ているかもしれません。
護身術とは書きましたが、イスラエルの軍隊に採用されていることから分かるように、一瞬で相手を戦闘不能にしたり、多人数格闘に対する対処法、武器に対する対処法が多く含まれています。また、上級になるほど(当流では青帯から)、要人警護の要素を含むようになります。分かりやすく言うと、SPやバウンサーのような方々に求められる破壊よりも制圧の技術です。これは伝統武道では含まれない現実的な要素です。常に周りを見て、守るべき人を気にしながら戦う、という技術を身に着けることができます。
銃に対する護身法は、世界一銃が持ち込みにくい国である日本で使用することは少ないですが、ナイフに対する備えは治安悪化が懸念される都市部などでは身に着けておいて損のない技術であり、いざというときのための備えになります。犯罪の被害者たちは往々にして、「まさか自分が」という思いを抱くものですが、その後悔をしないためにもこうした技術を身に着けてはいかがでしょうか。
クラヴマガの技術🥋
パンチ、キック、投げの立ち技に加えて、関節技やグラウンド技術も含みます。そういった意味では総合格闘技に似ているように思えますが、一番の特異点はルールがないことです。目つぶしや金的、また、噛みつきや髪をひっぱる行為も問題ありません。もちろん、練習では怪我のないような内容で行いますが、有害な存在を排除するために手加減をしない技術ということで、ご理解ください。
反射的な動作を身に着けることで、突発的な場面に対処できるようになります。攻撃と防御を同時に行うことを旨としており、力なきものが生き抜くための術を学ぶ、とお考えいただければと思います。
但し、「誰でも簡単に身に着けられる」という文言には賛同しかねます。空手であれ柔道であれ、誰しもが稽古を重ねれば強くなることはできます。それは努力なしの即席で強くなれるということではないので、一定レベル以上は本人の閃きと修練に依ります。学問に王道なし、というようにお手軽で強くなれる武術など存在しません。確かに、クラヴマガの技術は魅力的ですが、あなた次第で玉にも石にもなり得るものです。
イミクラヴマガとは🔫
この項は師事しているボアズ・ハガイ(Boaz Hagay)氏の流派の視点で記載します。
上述したように、クラヴマガは統一した中央組織がないため、諸流派が独自の路線を歩んでいます。またその技術の性質上、試合を行うことも難しいため、技術の交流が乏しいのが実情です。合気道と同様に、創始者の理念は時代を経るごとに薄まっていくようで、どうしても力に頼った猛者が幅をきかせてしまうものです。もちろん、筋肉はあるにこしたことはないのですが、力に頼ることで本当の技術が身につかないことは柔の技を修めたことがある方には痛いほど理解できる事例です。
そんな中で、祖師イミ氏・高弟ヤロン氏から直接指導を受けたボアズ氏が考えるのはイミ氏が唱えた純粋なクラブマガの技術の普及です。また、軍人格闘と聞くと相手の息の根を止めることに目が向きがちですが、本来のクラヴマガは護身のために生み出されました。
そういった思いをこめて、ボアズ氏はイミ祖師の名前と護身の心を含めて、イミクラヴマガ・ハガナアツミットという呼称で指導を行っています。また、合気道や剣道など日本武道を経験したボアズ氏の技は、本来のクラヴマガに良い意味で肉付けがされており、体格的に外国人より小柄な日本人にも馴染みやすい体系になっています。
「イミはよく~と言っていた」とボアズ氏が小話を話してくれるのですが、日本人には意味が通じにくい冗談で、イミ祖師との思い出話をにこやかに話す姿を見れるのも、この団体ならではの特徴かもしれません。
日本におけるクラヴマガ商標騒動💰
クラヴマガジャパンの松元國士氏と国際クラヴマガ協会のエヤル・ヤニロブ氏によって、日本における「クラヴマガ」という商標が登録され、他団体は使用ができなくなりました。
難しい問題ですが、日本企業の商品名などを片っ端から商標登録して権利売却で利益をあげる某国の例もあるので、あこぎではありますが法的には問題行為ではありません。
詳細は述べませんが、日本のというか世界のクラヴマガ界でもこうしたトラブルは多々あります。
どの団体が自分に合っているかは、興味を持たれた方の目で、判断するしかないでしょう。
おまけ~イミクラヴマガ・ハガナアツミットの意味~🗡
ヘブライ語の直訳で解説します。
クラヴ(קרב)=戦い
マガ(מגע)=接触
ハガナ(הגנה)=護身
アツミット(עצמית)=自分
近接戦闘における護身術、ということです。
ちなみに、ヘブライ語は右から左に読みます。
ビタギラ、ハガナットゥカッファ等、技の名称は全てヘブライ語です。
イスラエル武術なので当然とはいえ、私を含めた日本人生徒は最初は驚きました。
おまけのおまけ~イミクラヴマガの達人の動画~⚔️
エリアビグザル氏は、ボアズ氏がイミ氏の生徒の中で最もクラヴマガが上手だったと称する方で、彼が目標とする故人です。
力に頼らない技術と動作がボアズ氏にそっくりで驚きました
ボアズ氏曰く「これが本当のクラヴマガです」
クラヴマガという日本ではマイナーな格闘技を稽古する方はきっとyoutubeで沢山の動画を見ていることと思いますが、是非ともEli Avikzarの動きを目指して、力に頼らない日本の合気道に近い動きを理想としてクラヴマガを稽古してください。
蛇足ですが、エリ氏は柔道と合気道有段者(但し、海外支部認定)です。
3つ目と4つ目の動画はボアズ氏です
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