少林寺拳法について(おすすめ武術その③)

Kazuma Muroi

Shalom Homesの代表取締役。NPO法人横浜市まちづくりセンターの理事。執筆テーマは古武術・子育て・民俗学・宗教学。

東京経済大学より転載

・純粋な戦闘力  ☆☆☆☆ 
・実生活への応用 ☆☆☆☆☆
・月謝や道場数  ☆☆☆☆☆
・子供への教育  ☆☆☆☆☆
・考察 
 少林拳と混同されること多々ですが、こちらは日本発の武術です。



①歴史について

少林寺拳法は戦後に荒廃した日本の若者を導くために宗道臣氏という一人の男が立てた拳法です(現在の総裁は娘の宗由貴氏)。
つまり、日本で生まれて、歴史がまだ浅い拳法です。
少林寺の名前は嵩山少林寺の名前にあやかって付けたそうです。
創設者は中国拳法やその他武芸を自分なりに融合して今の形にしており、創設当時、魅力的な拳法と言われ、他流派からの有名武術家も多くが学びに来たそうです。
現在では世界各国、数百万の拳士を抱える規模になっています。
また日本九大武道の一つに数えられています。
他の八武道に比べて、歴史が浅くとも、同格に位置できるこの武道の有用性・有効性は推して知るべしと言わざるを得ないでしょう。
<柔道、剣道、弓道、相撲道、空手道、合気道、少林寺拳法、長刀(なぎなた)道、銃剣道>


②理念について

少林寺拳法は日本の若者に健全な肉体と精神を育ませるために発展させる目的だったらしく、「相手を倒す」というよりは「自分の身を護りながら相手を制す」要素が強いです。
拳禅一如など、肉体と精神両面を鍛える考えが強い。
人間を育てるという意味で教養を身につけ、心を豊かにする宗教団体でもあります。
護身術としての意味合いが強く、日本人の争いを好まない文化にも上手く適応し、今では世界的にも大きな組織となっています
力無き正義は無力なり 正義無き力は暴力なり」とは宗道臣氏の理念で、武力というのものの核心をついています。


③これから習うことを考えている方へ

少林寺拳法を考えている方、精神修養を図るにはとても良い武道だと思います。
護身術として、蹴りや突きを交えた剛法、関節技や掴まれた時の返し技を含めた柔法を習得することが出来ます。
女性が気負いせずに修められ、月謝もお安い、日本全国練習場所が多い、というお手軽感があります。
但し、四段(正拳士)以上は香川県の総本部でないと昇段試験が受けられません。 

さて、少林寺拳法は弱い、とよく言われます。
私見ですが、それは練習方法が相手を倒すことを前提に行われておらず、理念が身を護ることを前提にしているからであって、この武道自体が弱いわけではないと思います。
また、この武道を習っている人の故障率の少なさ、身体の柔軟性、心身壮健、お歳を召してからも続けられることを考えると、一生続けられる武道ではないかと思います。
それこそが東洋武術の真髄ではないでしょうか。

追記すると、現在の少林寺拳法の黒帯授与は他の武道に比べて非常に敷居が低いです。
極真空手が試合の成績等、柔道が試験で一定数の勝利、といった、実戦を重んじているのに対して、少林寺拳法は悪い言い方をすれば、習い続ければ誰でもいずれは黒帯になれます。それは現在の指導部の考えなのかもしれませんが、それが喧嘩に弱い黒帯を輩出している原因なのかもしれません。
さらに、本当に効く柔法(関節技)ができていないまま昇級してしまうこともあります。
しかし、本来の技を修められている人と対峙すると、いかに奥深い武道かはすぐに分かります。
すぐに喧嘩で強くなりたい、という気持ちの人には合わないかもしれませんが、武道を通して自分の軸を作りたい、というしっかりした気持ちがあれば、この武道はやり甲斐のあるものになるはずです。
そんなあなたが本来の技を修めているよい指導者にあえることを願います。


④経験してみての感想

掴み技、投げ技、関節技からなる柔法と、突き蹴りからなる剛法があります。
自分の身を護りながら相手を制す精神が根底にあり、相手を痛めつけずに行動不能にする技が多く見受けられます。
その理由から、基本的には対人稽古が中心です。
空手などの打撃技に加えて、合気道などの関節技・抜き技も学べてお得感があります。
難点としては、約束組手や型稽古中心のところが多く、子供が多い練習場所だと、成人の方はやや物足りないかもしれません。
有段者の方になってくると、いつ自分の練習してるの?というくらいに指導側に回ってしまいます。(他の武道でも言えることですが)

この武術を極めた人にははっきり言って触れません
それだけだと、他の武術も同じだよ、と言われますが、現代社会での危機回避に一番適しているのではないかと思います。
暴漢に襲われたパターンで例えるなら、打撃で応戦する場合は相手から手を出さないとこちらの罪になってしまいますし、下手に打ち込んで怪我をさせても後が大変です。
投げや関節が有用な理由は、相手に大怪我をさせずに取り押さえられることです。
しかし、柔道の投げ技は激しいため相手が心配、総合格闘技のグラウンド技は地面がアスファルトでかつ女性が膝出しスカートの時などに不向きです。
そんな時に力を発揮するのが、この武術です。
力が無い人が力のある人を取り押さえられるような、テコと体捌きを利用した関節技が多く、また、手首など比較的掴みやすい部位が対象になっている技が多いので、普段着の女性でも技の効果を発揮しやすいことと思います。
いきなりファイト!みたいな場面は社会にでればまずありませんし、普通に生きて、自分の身を護るということを目指すならば、この武道は最適かと、またそれを想定しているんでないかと思います。
但し、精度を求められる技が多いので、相手も武術経験者の場合に、中級者がどこまで対応できるのかなど、疑問はあります。

稽古内容は下にも書きましたが、本当に道場次第です。
社会人が多く在籍するところは、怪我への配慮か、衛生面への気遣いか、汗だっくだくになる程激しい稽古をしているところは少ないようです。
練習場所には困りませんし、月謝は知る限り概ね3000円でした。
また、協力会費や寄付金を募ることもほとんどなかったので、1年間で36000円で収めることが本当に可能だったと思います(武道によって月謝以外に色々徴収する道場があります)。
辺鄙な場所の夜稽古以外は、子供の稽古人数がとても多いです。
運動系の子供の習い事としてはこれ以上ないくらいリーズナブルで健康的でかつ怪我をしにくいです。

但し、非常に多くの稽古場所があるということはそれだけ多くの指導方針があるということであり、道場長の考えひとつで、この武道が楽しくもなり退屈にもなります。
道場を選ぶ際には、親も体験してみるなど、子供・生徒の目線で考えてみてください。


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