少林拳について(おすすめ武術その②)

Kazuma Muroi

Shalom Homesの代表取締役。NPO法人横浜市まちづくりセンターの理事。執筆テーマは古武術・子育て・民俗学・宗教学。

Instagramより転載(特徴的な画像がない、、、)


・純粋な戦闘力  ☆☆☆☆☆ 
・実生活への応用 ☆☆☆☆☆
・月謝や道場数  ☆
・子供への教育  ☆☆☆☆

・考察 

 少林寺拳法と混同されること多々ですが、こちらは中国産の武術です。
ここで述べる少林拳は演武用の拳法ではなく、実戦拳法なので、誤解無きように。


①歴史について

少林拳は中国武術の泰斗・嵩山少林寺の武術と言われています。
簡単に中国拳法って言っても少林拳、武当拳、蔡李佛拳、八極拳、洪家拳、酔拳、蟷螂拳、太極拳...など多様な流派が存在します。
その中でも歴史もある正統派と言われるのが少林派!
歴史は1000年以上にも渡ります。
全部で七十二式あって極めるのには何十年かかるそうです(全て修めるのは不可能?)。
通常はその中の数種を選択して修行するそうです。
達磨禅師が伝承したのが起こりと言われていますが、禅師の修行先が天竺説だったり崑崙山脈説だったり統一されておらず、禅師の存在を疑う説もあります。
私見ですが、中国武術の一派にはある拠点の周囲一帯で同じ血脈・地脈の集団が住んでいて、自警団的な武術がそのまま一門を構えるに発展したケースが実在するようです。
つまり、少林拳も少林寺を取り巻く農民や禅僧たちが、外敵から家族や財産を守るために編み出した拳がそのまま少林派に昇華したなのかもしれないな、と。
嵩山少林寺と福建少林寺が有名ですが、後者はもう残っていません。
聞いたところ、少林寺自体が文化大革命での弾圧対象となり、映画「少林寺」が放映されるまでは今のような脚光を浴びることはなかったそうです。


②理念について

少林拳は「如何に敵の急所に先手を打つか」という合理的な考えで磨かれた武術。
それにともなって心身を鍛え、気功や活法殺法を交えていく感じです。
おそらく中国は昔から盗賊の被害や戦争が絶えない歴史であったから、そういった敵からいかに身を守るかという精神が武術の根底に位置するのではないでしょうか。
つまり生死をかけて技を極める。
だからDISCOVERYチャンネルの少林拳特集であんな神業が披露できるのでしょう。


③これから習いたい方へ

少林拳を習いたい方、こちらは東洋武術の中では特殊な部類に入ると思います。
禅の要素を取り入れて、精神修養を。。。というのは普通ですが、この武術は相当実践的(むしろ実戦的)に作られています。
攻撃のカウンターでまず目潰し、追撃には足を踏んで逃がさない、股間を蹴り上げてそのまま顔面蹴りetc...
古流武術の一つであって、現代武道とは一線を画すものだということでしょうか。
また、現在日本に伝わる古武道とも指導が大きく異なっていると感じました。
突き詰めていくと人体破壊に特化した殺人術に成り得ます。
もちろん、活人拳の要素もありますが、上記の理念が根底にあることをお忘れなく。


④経験してみての感想

私が経験した武術の中で、非常に実戦的な武術でした。
総合格闘技も戦闘分野で相当強いですが、多人数戦における寝技の難しさ、急所を突くことに関する技術、力ではなく技術で相手の命に危険を及ぼす可能性の高さ、などで少林拳の後塵を拝すものと考えています。
練習方法が他の武術と違ったのも少林拳の特徴でした。
筋肉というよりも、筋や健、骨を鍛えるという稽古です。
有用性に関しては少林寺拳法と同様に、身体能力を筋肉以外のことから高める点、柔軟、護身のあらゆる点からみて、日常生活に活用できるものと考えます。
捕縛術としても指一本掴んだらそのまま関節技まで持っていく技術など、他の武術に後れを取りません。
私事ですが、私がこの武術を習おうと思ったのは暴漢撃退をする時に殴らずに取り押さえるにはどうしたものかと考えたからでした(当時、ボクシングを習っていましたが殴ると捕まるから)。
この武術を習う上で一番の難点は習える道場が本当に少ないことです。
縁があって学べたところは実践的な稽古が多く、中国の少林僧がやるような一人型演武はほとんどやりませんでした。
基本以外は二人対人稽古が100%で、技をかけたりかけられたり、非常にためになる稽古でした。
九州には多くの少林拳団体と道場が存在しますが関西地方以東はほとんどないです。
ちなみに「少林流○○」「○○少林派」という会派や流派が巷に溢れていますが、あまり少林拳と共通する技術はありませんでした。
手首を掴まれた時などの抜き手に関しても、少林拳の反撃主体と他の脱出主体とでは根本的に動きが異なっていました。
少林拳を崇拝しているということではなく、世の中にある贋物にお気を付けくださいという意味です。
話が逸れましたが、郊外などで道場を構えず青空教室などで稽古している場所もありました。
機会があれば是非ともまた習いたいと思っているところです。
子供向けかというと、やや技術面の理解が難しいところはありますが、空手と共通して体を動かすところではよい稽古になると思いますので、お勧めです。
私が子供に戻れるなら是非とも一から学び直したい武術です。

0コメント

  • 1000 / 1000