日本の教科書で教わらない世界史

Kazuma Muroi

Shalom Homesの代表取締役。NPO法人横浜市まちづくりセンターの理事。執筆テーマは古武術・子育て・民俗学・宗教学。

現在の国際世論は様々あれど、先進諸国、とりわけ日本に入ってくる情報は大いに西側諸国のフィルターが通されたものが多い。
すなわち、キリスト教の目を通して語られている。
私が、宗教学を学び出して、大いに感じたことは日本の世論がいかに偏ったものであるかということである。
また、いかに欧州諸国が偽善に満ちた世界であるかということもよく分かる。
今回はその話をざっくりとしたい。
 
四大文明の時代を過ぎ、西暦0年~300年頃に世界の覇者の地位を確立したのはローマ帝国を置いて他はないだろう。
ローマは一日にして成らず、という有名な言葉もあり、上水道施設や道路網、娯楽や学問など多くの功績を今に残している。
ポンペイの世界遺産など興味があったら調べてほしい。
 
600年以降、世界を席巻したのはイスラム王朝である。
意外と知られていないが、欧州諸国が暗愚な王やローマ教皇の独裁によって経済と政治が低迷しているころ、ペルシャを中心とするイスラム圏はイスラム教の誕生と共に大いに栄えることとなる。
 
800年以降、世界の最も栄華な王朝は唐と言えるだろう。

門外不出の絹の製法を軸に莫大な富をもつ唐は、中華思想によって周辺諸国に朝貢させ、自国の領土以外にも影響力を波及させていた。
日本の平安時代に行われていた遣唐使で、「唐」の名を知っている方も多いだろう。
アジアに世界最大の発展都市があった唯一の時代である。
 
1000年代に入り、イスラム諸国の隆盛に押された欧州諸国は十字軍をエルサレムに派遣することとなる。
エルサレム奪還とイスラム諸国の教化が大義名分であったが、実際は、イスラム諸国に飲み込まれそうになる東方正教会からの救援を利用して、キリスト教界の覇権を奪おうとするローマ・カトリックの欲にまみれた戦いであった。
それに便乗した王侯貴族によって、膨れ上がった軍は幾度もイスラム諸国へ侵攻して、イスラム諸国へ現代にも続く遺恨を残すことになる
また、道中でユダヤ教徒・イスラム教徒を惨殺・強姦・強奪し尽くしことも特筆に値する。
 
チンギス=ハンのモンゴル帝国によるユーラシア大陸の文化の融合が行われ、1300年頃にはオスマン・トルコが誕生して、「最も理想的なイスラム国家」と呼ばれることとなる。
イスラム法シャリーアを中心に据えて、他宗教にも寛容であり、イスラム教のトップ「カリフ」と国のトップ「スルタン」を兼任して、第一次世界大戦までイスラム圏の中心であり続けた。
同じ時代、中国では火薬や羅針盤の発明が行われる一方で、ヨーロッパではペストが流行り、キリスト圏の治世は絶望的な状況であった。
この流れで東方正教会の本拠地で、1100年間ローマの首都であり続けたコンスタンティノープル(現イスタンブール)がオスマントルコによって陥落させる。
 
1500年頃、地中海をオスマンに支配された欧州諸国は海路に活路を見出し、大航海時代が幕を開ける。
インドからの香辛料がイスラム圏を経ることによって、価格が数十倍に跳ね上がる状況を打破したく、アフリカ大陸の南側からインドへの航路を開拓したかったというのが契機らしい。
この流れで、アメリカ大陸の発見からインカ・マヤ文明の滅亡まで時代は数珠つなぎに流れていく。
インディアンを含む先住民は来訪者を温かく迎えたという事実を特筆しておきたい。
大舟に乗ったヨーロッパ人を招いたために惨殺されたアステカの民の様に、キリスト教諸国は先住民族を蹂躙して土地を奪ったことはなぜかあまり語られることがない。
アメリカがインディアンを追い込んで建国されたこと、現在の南米やオセアニアの宗教がなぜキリスト教なのかを考えてみていただきたい。
同時代に、日本が植民地化されなかったのははっきりと分からないが、文明が発展していたこと、中国が近かったこと、航路の経由地点として使えなかったことなどがあるだろう。
ただ、諸条件が整っていたら日本も同じ目に遭っていたことは忘れないでほしい。
 
1700年代より、産業革命と植民地運営によって世界の中心はヨーロッパに戻ってくる。
アフリカ大陸からの黒人奴隷の大量輸送、東インド会社設立など、陰で泣いていた部族がどれほどいたことかは語り尽くせない。
また、オスマントルコも欧州諸国の餌食となり始める。
地方に自治を認めていたことで、オスマン朝を通さなくても地方領主は欧州と取引することで富が中心に集まらなくなっていく。
また、専属売買契約によって国内産業を瓦解させられ、無理な欧州化、寛容的に受け容れていた他宗教の軋轢など、軍隊を用いない策略でどんどんオスマン朝は「瀕死の病人」と化していく。
 
1900年代、世界は二度の大戦争を経験する。
ここで着目したいのは、陣営の主要な国はキリスト教国ばかりである点である。
歴史上全ての争いの引き金の原因がキリスト教国ではありませんが、大航海時代での虐殺やこうした世界大戦など、世界で多くの争いごとの中心にはいつもキリスト教の姿がある。
ユダヤ教徒に数百年日常的に行われていた虐殺ポグロム、カトリック教徒減少の一因になったローマ・カトリックの児童性虐待や裏金問題など枚挙に暇がない。
大戦後、米ソの冷戦によって、中東地域に大量の武器が流入したこと、両陣営が肩入れしたことは現在の長引く内戦・紛争状態を招いた大きな要因である。
イスラエル・パレスチナの問題も、最大の要因はイギリスの三枚舌である。
アフリカの内戦、南アメリカの治安の悪さも、こうした大国の利権争いで武器と資金が注ぎこまれたことが原因である。
 
2000年代、世界から争いはなくならない。
多様な価値観と利権がせめぎ合い、アフリカと西アジアでは内戦が今でも終わらない。
 
私はキリスト教は素晴らしい宗教だと思っている。
キリスト教を信奉する国々が、本来の教義を忘れ、自律できずに争いを引き起こしてばかりなのである。
それはアングロサクソン人の気質かもしれない。
どちらにせよ、キリスト教国家の欲望のために、世界中の人々をどれほど苦しめた歴史があり、今でも彼らの都合の良いように歴史は語られていることを忘れてはならない。

総括すると、宗教問題を忌避する日本教育では見えにくいが、世界史は宗教を中心に動いていると言っても過言ではない。
また、日本も決して無宗教ではなく、そう刷り込まれているだけである。
ほぼ全ての日本人が慣習としている行いには、神道・仏教の宗教儀式が起因している。
自分のルーツを探るためにも、是非、興味を持っていただきたい。

 


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