なかなか得難い武術書となっている『天眞正傳香取神道流武道教範(以下教範)』を購入することが叶ったため、差し障りのない程度にご紹介いたします。
こちらの書は現代、神奈川県川崎市に位置する杉野道場唯心館で師範をされている杉野至寛先生の父、杉野嘉男先生と同門の伊藤菊枝先生が著された本です。
杉野嘉男氏は黒澤映画で剣術指導をしたことでも知られています。
構成は、1)總説 2)各説 3)居合術 4)剣術 5)薙刀術 6)棒術 7)講話という七編で、200頁を超えます。
写真を交えた解説で、当時(昭和16年)としては画期的だったのではないでしょうか。
總説で、「適当の教本又は参考書」として作成した意図が語られていますが、まさに分かりやすい内容にしようとした思いが感じられる作りです。
著者は作中で、この教範では基本的な型を記述するに留め、続編により進んだ型を載せる旨を謳っていますが、教範の二冊目は存在しないようで、ご存命のうちに書かれることがなかったものと思われます。
言葉遣いや漢字に当時の名残があり、ちょっとした古典として、また当時の日本文化の資料としても読んでいて興味深いです。
他の香取神道流の著書として大竹利典氏の『平法』と椎木宗道氏の『天真正伝香取神刀流 いにしえより武の郷に家伝されし精妙なる技法群』が有名です。
前者は大竹氏の体験談と稽古に臨む心構えが語られており、後者は写真を交えて型の流れを紹介しております。
どちらの本も好きですが、門下生の一人稽古には今回の教範と後者の本を合わせることと流れが掴めることでしょう。
ただし、千葉に伝わる型と神奈川に伝わる型には微妙に異なる部分があるので、ご自分が習いたい色の道場をご参考にされるのが良いと思います。
最後に、唯心館に所属されていた鳥飼先生の薙刀のご紹介。
追記です。
入手困難と投げっぱなしちゃったので、読みたい方向けのご案内。
現在はネットオークションで一冊万単位で取引がされているのと、国立国会図書館で閲覧することが数少ない手段と思われます。
後者は貸出はできないと聞いております。
ご参考までに。
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