「日本の伝統文化」と聞いて、着物や手工芸など色々なものが想起されますが、そこに携わっている人は認知度の割に多くありません。むしろ、後継者不足などの課題を抱えており、より多くの日本人に関わってほしいと皆が思っています。
少なからず伝統文化に携わる者として、現代日本人が心理的ハードルに感じていそうな課題を挙げてみます。
1.何をしているのか分かりづらい
「ネットで何でも無料で」に慣れている現代人にとって、非公開な点が多い日本伝統工芸はとっかかりに心理的ハードルがあります。本来、伝統工芸であれ、伝統芸能であれ、技は秘匿すべきものでした。一子相伝の言葉の意味を考えれば当然ですが、武芸などはネットに公開されれば対策を練られてしまうので想像に難くありません。また、高齢化が進む中、情報のアウトプットに慣れていない担い手が多く、知りたい人とのギャップはより広がるばかりです。
2.修得までに時間がかかる
「とりあえずやってみる」という感覚であまり歓迎されないのが伝統文化の世界で、やるからには「石の上にも三年」のスタンスが求められます。三年続けてやっと入口に立てると言われる程下積みが長く、また一生をかけて修業を続けるものもあるため、インスタント文化に慣れている現代では相当の心理的ハードルが高いです。
3.募集する側も若手しか募集しないことも
これは稀なケースですが、20歳前後しか弟子に募集しない文化もあります(参考:日本芸術文化振興会)。伝統工芸品や古武道などは幅広い世代を弟子に受け入れています。ただし、伝統文化に興味をもつ学生は稀有な存在であり、興味を持った時には既に門戸が開かれていないジャンルがあることも事実です。
4.兼業ならぬ兼流がご法度
他の師範について学ぶことは全くと言っていいほど歓迎されません。特に同じジャンルの伝統文化で他の師につくことは破門レベルです。「体験」を受け容れている流派なら別ですが、一年単位でつまみ食いをするような鞍替えが忌避されるのは企業の人事採用と同じです。逆に言えば、少人数しか弟子を取らない門派の師弟の絆はとても強固です。
5.給与面が不明確
月給に関してはほぼ情報が公開されないため、人脈を介するしか手段はなく、社会人からの参入に大きな障害となっています。内弟子を採用する文化もまだ残っていますが、修業期間は「技を教えて頂く」ので無給というところもあります。
6.消費者側の立場では高価なものが多い
和服がよい例ですが、若者が伝統工芸品をまず消費(購入)しようとしても、高価なため簡単に手が届かずに、機会を逸してしまいます。使ってみないと分からない、やってみないと分からない、けれども、そもそも普段の生活の中で日本の伝統文化に触れる機会がない、というのが現状です。
欧米のファスト文化に慣れてしまうと、日本の伝統文化は重苦しく感じるかもしれません。しかし、こうした時間と共に熟成されるからこそ、世界のエグゼクティブは日本の伝統文化に惹かれてやまないのです。
日本の伝統文化を継承するための伝統と格式を重んじるスタイルに私は大いに賛同します。それと同時に、学校への出前授業や体験イベントを通じて、日本の若者がより日本の伝統文化に触れる機会を作るのは、文化の担い手である大人の務めでもあるでしょう。
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