日本人が日本人であるために学ぶもの

Kazuma Muroi

Shalom Homesの代表取締役。NPO法人横浜市まちづくりセンターの理事。執筆テーマは古武術・子育て・民俗学・宗教学。

あなたは何をもって日本人だと思いますか?

私は日本が好きです。町行く人に「日本が好きか嫌いか」を尋ねたら、十中八九は好きというでしょう。質問を変えて、「あなたは何をもって自分が日本人だと思いますか?」と尋ねると、親が日本人だから、日本に住んでいるから、以外にどんなことを答えられますか?

海外に住んでいる日系人は、ブラジルなど特別な行事を残している地域を別として、三世代ほど下がると日本語を話せなくなります。つまり、日系三世になると日本語で会話できる人はほとんどいなくなってしまうのです。良く言えば順応性が高い、悪く言うと民族のアイデンティティが無いのです。

では、日本人を日本人たらしめるために学ぶものとは何か、それは日本伝統の歴史、具体的には古典文学日本史です。


外国人が惹かれる日本文化

日本の古典芸能といえば、歌舞伎を最初に挙げる方が多いかもしれません。日本の伝統文化は世界で非常に高い評価をうけています。能や狂言、歌舞伎、相撲という日本の若年層には敷居が高い伝統芸能を、世界のエグゼクティブがわざわざ観覧にくるのです

先日、刀剣乱舞のお話をしましたが、日本刀や古武道も人気です。日本古武道協会の筆頭、天真正伝香取神道流を世界に宣伝してくれたドレーガー氏も外国人です。その影響あってか古武道場にはほぼ必ず外国人がいますし、薙刀男子に至っては外国人の方が人気が高まっています。いざ、日本人がその伝統芸能の担い手になっているかというと、少なく見積もっても9割以上の人には無縁の世界です。日本のアニメも絶大な人気がありますし、私もよく観ます。鬼滅の刃を皮切りに、多くの日本人が貢献していますが、それは日本のアイデンティティとは別問題です。

つまり、日本の伝統文化は海外の方が高く評価され、日本国内ではむしろ古臭くダサいという印象を与えてしまっているのです。もしも、その担い手から10代以下を探すのは、一子相伝を除けば、非常に稀有な存在といっても過言ではないでしょう。


なぜあえて古典「文学」なのか

源氏物語、枕草子、平家物語、竹取物語、、、これらのタイトルを一度も聞いたことがない日本人はおそらくいないでしょう。学校の必修課題として採択され、教科書に載っているからです。ですが、皆が一度は触れるこれらの文学作品を、それ以降深堀りする人が少ないのはなぜでしょうか。それは、学校の古典の授業がつまらないからであり、古典に対する好奇心を育むのではなく受験戦争のための武器のひとつという位置づけにしてしまっているからです。

「いとをかし」を直訳すると「とても趣深い」ですが、和歌に謳われている心情を真に理解するのは、古典を突き詰めていない人間には困難です。もののあはれの心境を問われてもちんぷんかんぷんです。しかし、この古典文学にこそ日本人が平安時代から連綿と受け継いできた、和の心、言い換えれば大和魂が詰まっているのです。日本書紀や飛鳥文化にも、もちろん文学作品はありますが、平安時代は894年の遣唐使廃止以降、やっと日本独自の文化(国風文化)が華開いたのです。今とは全く違う言葉遣い、文法、その中にこそ日本人のアイデンティティの源泉が詰まっているのです。

「そんな昔のこと関係ないし、役に立たないよ」と思うなかれ。京都を尋ねた時に、きっとあなたは日本の伝統文化の片鱗に感嘆の声をあげるでしょう。龍安寺の石庭にほっとしたり、貴船神社(下図)に癒されたり。寺社仏閣という分かりやすいものだからこそ、確かに感動が伝わりやすいのも事実。ところが、内面や心情により共感するのは文学作品の方が優れているのです。


日本史(特に戦後史)を学ぶ意味

日本人なのに日本の歴史を答えられないことを恥と思うかどうかです。国際社会の中で、自国の歴史を語れない人はまずいませんし、皆一様に誇りをもって語ります。ところが、日本人はそうでもない。なぜ日本人は自分の国の歴史を強く語れないのでしょうか?教えられていないからです。特に、第二次世界大戦後の現代史は、中韓の目を気にして強い意見を述べにくい社会が作られています。敗戦を機に、戦争史観だけでなく、神道をはじめとする日本人が連綿と受け継いできた和の心を育てる教育までカットされてしまったのです。そんな大人の事情が子どもに波及して、今の日本人には愛国心が育ちにくくなっているのです。破壊された教育を立て直すことは容易ではありませんが、必ず成し遂げなくてはなりません。

歴史を知らないことは、自分が何者かを知らない、自分の意志に確たるものを持てない、非常に危険な状態であるということを理解してください。歴史を学ぶことは、今の自分の立ち位置を確認することに繋がります。そして、今の自分に繋がる軌跡を知ることで、これからの自分が目指す新しい道もみえてくるのです。

どうして中韓があれほど反日に傾いているのか、ロシア北朝鮮がどうしてあれほど幅をきかせるのか、トルコがなぜ親日と呼ばれているのかetc...歴史を知ることは今の世界を知ることに繋がります。


日本人と胸を張れるように

日本の文化は世界で非常に評価されています。先に述べた伝統文化、アニメ以外にも、街が綺麗、治安が良い。また、日本人も勤勉、努力家、組織人として能力値が高い、などビジネス面で好評です。あともう一押し、芯になる強い部分だけが足りていないのです。すぐに謝る、困っていてもヘラヘラ笑っている、など人としての弱さは世界に知れ渡っています。「日本人をバカにするな!」と世界に大して強く言える、そんな人材をこれから育成していきたいものです。

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